代理店に残るか、事業会社に移るか。
これは「やめとけ」で検索した人が最終的にぶつかる、大きな分岐点のひとつです。
正直に言うと、私自身は事業会社への転職を真剣に考えたことはありません。
良いなと思ったことはありますが、実際に動いたことはない立場です。
ただ、同僚が事業会社に移っていくのを何人も見てきましたし、マーケティング業界に身を置く立場としてかなり解像度高く話せる部分があります。
その経験から見えたことを整理します。
「仕事を発注する側」と「仕事を受注する側」
広告代理店は、広告主から仕事を受ける側です。
事業会社は、それを発注する側です。
単純に立場だけで見れば、発注する側のほうが上、あるいは楽だという見方もできます。
そして、代理店で培ったノウハウを持つ人材は、事業会社側からすると喉から手が出るほど欲しい存在と言えます。
運用の知見そのものだけでなく、代理店特有のバイタリティも評価されやすいポイントです。
代理店キャリアのメリット・デメリット
メリット
- デジタル広告の最前線を体験できる
- 媒体社からも最新の情報が舞い込んでくる
- 1社に閉じず、複数のプロモーションを経験できる
- 専任担当制を敷いている代理店もあるので、一概には言えません
- キャリア形成期においては、非常に良い環境
デメリット
- 心理的にも身体的にもハードな働き方になりやすい
- 評価の中心が受注金額の大きさに偏りがちになる
- 収益の源泉が広告運用費に対するマージンであるため
- 運用費が大きくなくても、顧客に寄り添って感謝されるタイプの人材は、評価されにくい傾向があります
事業会社キャリアのメリット・デメリット
メリット
- 事業成長の打ち手の多様さ
- 自社のプロダクトの事業成長を広告という手法だけに縛られずに伸ばす経験ができる
(代理店にいると、どうしても「広告」という手段の中で物事を考えてしまいがちですよね)
- 自社のプロダクトの事業成長を広告という手法だけに縛られずに伸ばす経験ができる
- 事業運営や投資判断の素養が培われる。
- 目先のパフォーマンスだけでなく、「利益に繋がっているチャネルはどこか」という目線が代理店よりも強いです。(これは将来CMOを目指す人なら全員が持っている素養です)
デメリット
- 単一のプロダクト、単一のサービスに身を置き続けることになる
- 飽きっぽい人には向きません(複数のブランドを抱える事業会社であれば、この点は回避できる可能性があります)
- 給料水準は、代理店のほうが高いことが多い
- ホワイトな事業会社もあるので、一概には言えませんが代理店の方が残業手当などが豊富なことが多いです
- 社内ではコスト部門に位置づけられる
- 発注側で立場が強いように見えて、実際は肩身が狭いことがあります。
- お金を稼ぐ部門ではなく使う部門なので、代理店時代の感覚のままコスト意識を持ち出すと叱責を受ける場面もあります。
- 定量的なパフォーマンスが想定に届かないと、そのしわ寄せはマーケティング部門に強くのしかかります(代理店への発注元からの厳しい要求は、実はこの構造が背景にあったりします)
- 発注側で立場が強いように見えて、実際は肩身が狭いことがあります。
どちらに向いているか
自分が培ってきたスキルを、違う形で使ってみたい人は、事業会社に向いていると感じます。
ただし、注意しておきたいことがあります。
事業会社のマーケティング部門が代理店出身者に求めるのは、代理店的な「ディレクション」よりも、インハウス化した運用のチューニングや改善、プロジェクトマネジメントであることが多いです。
ここの認識をすり合わせておかないと、移ってから後悔することになります。
また、「代理店でのプレッシャーから解放されたい」という理由だけで移ると、
事業会社でも通用しないことがあります。
先に見た通り、事業会社には事業会社なりのプレッシャーがあるからです。
一方で、「将来的に独立したい」「CMOになりたい」という目標が明確な人には、
事業会社は非常に良い選択であると感じます。
移る場合、認識をすり合わせておきたいこと
事業会社への転職を考えるなら、求人票の役割名だけでなく、実際に何を期待されているのかを面接の段階で具体的に確認することをお勧めします。
ディレクション経験を求められているのか、インハウス運用の改善を求められているのかで、必要な準備がまったく違うからです。
広告業界の実務経験を正しく理解した上で選考を進めてくれる転職エージェントであれば、
この認識のズレを事前に埋める手助けをしてくれます。
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